医療の進歩と医療アクセスの向上が平均寿命を延ばすにつれ、世界的な慢性疾患の負担は増加しています。同時に、がん、心臓病、脳卒中などの重大疾病の発症率も急激に上昇しており、個人や家族に健康面および経済面の深刻な課題をもたらしています。これに対して、重大疾病(critical illness、CI)保険は重要な経済的セーフガードとして登場し、診断を受けた際に保険契約者に一時金を支給することで、収入減や多額の医療費を補う助けとなっています。
アジアでは、CIの保障ギャップや深刻な健康状態による社会経済的影響への認識の高まりから、重大疾病保険に対する需要が着実に増加しています。本稿は、公開データや市場調査から得た知見をもとに、アジアのCI保険に関する包括的な分析を提供します。シンガポール、香港、日本、台湾、タイ、中国という6つの主要市場におけるCI保険の進化をたどり、それぞれの市場の特徴や新たなトレンドを紹介します。
また視野を広げるため、米国におけるCI保険の発展と現状についても検証します。米国市場は、高度で革新的な健康保障の取り組みで知られています。アジアと米国の経験を比較することで、本調査研究は実践的な知見を抽出し、アジアにおけるCI保険の強化に向けた戦略的機会を特定します。
米国からアジアへの重要な示唆
- 販売チャネルの拡大:職域保険の規模が大きな市場では、保険会社が雇用主と提携し、CI保険を従業員福利厚生パッケージに組み込むことができます。
- さらなる商品イノベーション:雇用主は従業員のニーズに合わせて、関連する保障条件のみを対象とした団体CIプランを設計でき、保険会社は経験データや市場動向に応じて商品内容の更新が可能です。
- 料率改定の実務と柔軟な保険料構造:これらの手法により、保険会社は保険金請求発生率の変動や医療費のインフレ、人口動態の変化に対応し、商品の持続可能性を維持することが可能です。
- 社内の能力強化:保険会社が自社のデータと分析能力を蓄積することで、有利な再保険条件の交渉、リスクのうちより多くの割合の自社保有、地域ニーズに合わせた商品の設計が可能になります。
- 規制当局との連携:米国で実施されている最低損害率基準(minimum-loss-ratio standards)の導入は、透明性の向上と消費者価値の補強につながり、より説明責任を果たし消費者中心のCI保険市場の発展を支援します。