オバマケア法の合憲判決を受けた10の戦略的考察(英語版のみ)
29 June 2012
2012年6月28日、米国連邦最高裁判所は、患者保護と入手可能な医療に関する法(Patient Protection and Affordable Care Act (PPACA)、いわゆるオバマの医療保険改革法、オバマケア法)の主要部分が憲法違反では無いという判断を示しました。オバマケア法の関係者は、保険会社、雇用者、医療提供者、タックスペイヤー、政府と多岐にわたります。この記事では、オバマケア法によって変わる環境を機会とする戦略を考える上で、特に注目すべき次の10点を取り上げました。
- 個人に対する医療保険加入の強制については、どういった括りで行われるか、現在議論中です。もしそれが健康な個人を除外することになれば、オバマケアの結果、逆選択の問題が浮き上がってくるでしょう。
- 最高裁は、各州政府が、オバマケアのメディケイド(公的低所得者医療保険制度、州が保険者)拡大プランに従わないことを選択することができることを示しました。多くの州が従わない場合、州ごとに制度が大きく異なる可能性があり、メディケイドがさらに複雑化するでしょう。
- 雇用者は、どのような従業員向け医療保険が自分の会社にとって最適か、引き続き取り組むことになるでしょう。中小企業にとっては、メディケイド改革の動向も大きく影響を受けるでしょう。(オバマケアでは50人以上の従業員の雇用者に、従業員向け医療保険の提供を義務付けている。またメディケイド加入者は従業員向け医療保険から除外される。)
- 早期退職者にとっては、オバマケアによって設立されるエクスチェンジ(個人の保険加入者と保険会社とを仲介する機関)が極めて魅力的な医療保険を提供することになるでしょう。というのも、エクスチェンジに取り扱われるために、保険会社にはさまざまな制約が課されますが、最高年齢の保険料は最低年齢の保険料の3倍以内という制約があるためです。
- オバマケア法では、民間医療保険の保険料率の増加率は制限されることになります。今のところ、連邦当局は、増加率10%を「不当」と考えているようです。個人に対する医療保険加入の強制がどのような結論になるかにもよりますが、10%は、今のような仕組みを保ったままでは、達成不可能なほど低い水準のようです。
- オバマケア法は、州政府に対して、2014年までにエクスチェンジを設立することを求めています。いくつかの州はすでに設立に向けて準備していますが、その他の州は、州が設立しないことを選択することが可能か、来る大統領選挙の結果を待っています。
- オバマケア法は、保険会社に対して、ロス・レシオ(給付額を保険料で割ったもの)の最低ライン(80-85%、規模によって異なる)を定めています。これは、固定費の割合の大きい中小保険会社にとっては大きな脅威となるでしょう。
- 出来高払いの時代がついに終わるにつれて、リスク調整(個人個人の来年の医療費を予測すること)のテクニックがより重要になってくるでしょう。特にエクスチェンジでは、すでにある病気の患者に対する保険料を計算するのに、リスク調整が役に立つでしょう。
- 現状では、医療提供者によってさまざまなコストシフトが行われています。例えば、回収できなかった無保険者の治療費は、保険者からの報酬をもとに穴埋めされています。公的医療保険の低い報酬レートは、民間医療保険の高い報酬レートによって穴埋めされています。このようなコストシフトがオバマケアではどのように変わるのか、注目する必要があります。例えば、オバマケア法が無保険者の削減に成功すれば、未回収治療費についてのコストシフトは減少するでしょう。
- オバマケア法は、給付対象者の拡大や保険制度改革を促すものであり、直接医療費を削減するわけではありません。しかし、間接的に医療費を削減することを目指しています。例えば、オバマケア法では、医療提供者のアカウンタブル・ケア機構(Accountable Care Organization, ACO)の設立を認めています。ACOは、自分たちをかかりつけ医とみなすことができる患者の集団に対して、一定程度の治療成果の責任を負うかわりに、保険者からの報酬が支払われる制度です。これは、医療提供者に、医療費抑制のインセンティブを与えることで、全体の医療費を削減する効果があると言われています。