確定給付型が主流でない時代の生涯所得ニーズ(米国)

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作成者 Kari Jakobe |  2017年12月4日

ますます多くの被雇用者が、わずかばかりの社会保障給付以上の頼りになる毎月の収入源もなく退職する様子を見るにつれ、信頼できる毎月の給付へと簡単に経済的に変換できる口座のニーズは高まります。かつて退職後の保障の中心であった確定給付型年金プランの利用が減少し、401(k)および同様の確定拠出型プランの普及が進む中、雇用者は、一層多くの人が多額の現金とそれを枯渇させないためにどうしたらいいかの不安を抱えて退職を迎える様子を目にしています。

「私はこれからどうすればいい?」という質問を退職が近い被雇用者から受ける雇用者もいることでしょう。雇用者は一般的に、退職後のファイナンシャル・プランニングの支援に関する追加コストに法外な費用が掛かると感じています。さらに多くの雇用者が、特定の年金ソリューションを奨励することに伴うフィデューシャリー・リスクを当然のように心配しています。このため退職者は、通常自分だけが頼りとなるのです。

本稿は、以下の項目を含め、退職者が一時金を退職後の生涯所得に変換する際に一般的に用いられているアプローチについてまとめたものです。

  • 平均余命にわたる給付
    • 残存平均余命を用いて毎年再計算した調整額の給付
    • 開始時口座残高の4%を消費者物価指数(CPI)で毎年調整
     
  • 即時開始年金
  • 長寿年金
  • 長く働き、退職を繰延
  • 人事を尽くして天命を待つ
  • 結果的に複数のアプローチを採用しているかもしれません。

平均余命にわたる給付:「平均余命」による一般的アプローチには、残存平均余命を用いる戦略と4%ルールの2つがあります。

  • 残存余命は、退職者がファイナンシャル・プランナーに相談した場合によく使われるかもしれません。本アプローチでは、利用可能な資産を、毎年見直される残存平均余命で除算します。米国国税庁(IRS)は、利用可能な複数の平均余命表を公表しています。一般的に利用されている表は70 ½表として知られ、70 ½歳時に開始する個人退職勘定(IRA)からの最低分配金の決定と雇用主による退職金制度に使用されています。(本表は70 ½歳未満に使用する係数も掲載。)各年の係数は、残存余命を考慮しています。
  • 本アプローチの主な利点は、その単純さと生存する限り資産が残るという相対的な安心感です。しかし具体的な分配額は、運用リターンのボラティリティーにより年ごとに大きく変動します。また多くの退職者は、旅行やその他の余暇活動がより現実的である退職後の早い時期の費用が大きくなる一方、一般的に平均余命戦略における最初の分配額は、高齢になってからに比べて少額です。
  • 平均余命アプローチと同様に、本4%ルールは、管理コストが低額です。ほとんどの人が高額なアドバイザーの助けを借りなくても自分自身で初年度に利用可能な金額を計算することができます。 多くの人が、少なくとも退職後の早い時期であれば、CPI上昇に関するニュースを捉え、毎年の支払額を正しく計算できます。

両アプローチとも、以下をはじめとする複数の利点があります。

  • 退職後の期間が長くなる可能性を認識。これらのアプローチは、投資リターンと長生きシナリオのモデルに基づいて構築されました。この計算は、多くの退職者が90歳を大幅に超えて生存し、生存する限りその退職後所得が持続することを希望するという事実を考慮しています。これを考慮しない戦略は、生存期間が延びた場合に壊滅的結果をもたらしかねません。
  • フレキシビリティー。予期せぬ高額支出が発生した場合、退職者は退職資産を利用でき、将来の収入を減らして現在必要な金額を賄うという選択が可能です。
  • 相続人。多くの場合、退職者は相続人に資産を残します。 一方、平均余命アプローチには弱点もあります。
  • 規律(規律の欠如)。多くの退職者は、適切にルールを運用するために必要な財政規律が欠如しています。多額の退職貯蓄があることに加えて、必ずしもその全額が必要ではないかもしれないという認識から、抗しがたい誘惑が生じます。その結果、壊滅的というべき将来の収入の減少に見舞われるかもしれません。
  • 早い段階での運用損失。両アプローチ、特に4%ルールは、広範な投資シナリオに機能するよう設計されています。通常、数年程度の投資目標の未達は、そうならない年の結果で相殺されるはずです。しかし、早い段階で資金を引き出すと、その年のリターンが思わしくない場合、口座残高が減少し、その減少した口座残高に対して良好な投資利益を適用しても、損失を埋めるほどにならない場合があります。2016年秋まで低迷する市場リターンが続いたことから、この懸念が膨らんでいました。実際、本アプローチの潜在的危うさを示しています。
  • 想定外の引出。本設計を愛用する場合は、ある年の追加の引出を後年相殺する際には、単に引き出した金額だけでなくその追加の引出分に対する運用利益も相殺しなくてはならないことを理解しておくことが不可欠です。
  • 精神力の低下。多くの退職者は、退職した時には退職資金の管理能力が十分に備わっていると感じていますが、人生の終わりも近づいてくると感じ方も変わってきます。エネルギー、集中力、タイムリーに決定する能力、全てが年齢とともに低下します。多くの場合、これに認知症が加わるかもしれません。いずれ財務に関わる決定ができなくなるかもしれません。
  • 当初の引出が少額。これら両戦略とも、生存年数が長く伸びた場合でも、個人の資産のみに依存して高い確実性で収入を提供する資産が残存する仕組みのため、早い時期の引出金額を少額に設計せざるを得ません

即時開始年金:即時開始年金は、今(即時)開始して退職者が生存する限り継続する毎月の収入を提供する契約を保険会社と結ぶものです。多くの退職者にとって、これは魅力的なオプションかもしれません。

即時開始年金の利点:

  • 確実性。年金は、退職者が生存する限り、決められた水準の退職後の収入を提供します。長生きして資産を使い果してしまう心配は大幅に減少します。
  • 自制心が欠如した状態での決定に対する備え。年金は、人生の後期に原資(および収入)を減少させる自制心が欠如した状態での支出をするリスクを最小化します。
  • 精神力の低下。年金は、高齢者が意思決定で間違いを犯すリスクを減らします。

弱点:

  • コスト。保険会社およびその営業部隊は営利事業をしています。年金の価格は、保険会社が、たとえ100歳を超えても全ての保険金を払うのに十分な準備金を引き当て、営業処理費用、給付金分配費用、顧客連絡費用などの諸経費を賄ってもなお、利益を出すのに十分な価格となっているはずです。
  • 低金利。金利は長年低いままです。低金利は、年金を販売する保険会社も低い運用リターンを想定していることを意味します。年金価格はこの原理で設計されており、低金利時には価格が高くなります。
  • インフレ。定額年金の場合、毎月の給付金は退職者の生涯にわたり変動しません。米国経済は通常、ほぼ毎年幾何かのインフレを経験しているため、定額年金の購買力は徐々に低下します。変額年金であれば、これはある程度軽減されます。変額年金は、通常時間の経過とともに増加すると考えられる資金の流れを作ります。変額年金のコストは、保険会社が支払うと見込まれる追加の費用を反映して一般的に高くなります。
  • 原資の喪失。年金の構成要素の一つは、長く生きることのコストに対する保険です。火を使わない人にとって火災保険料がお金の無駄と捉えられることがあるように、また無事故の人が自動車保険料を浪費と感じることがあるように、多くの人が原資の喪失、つまり年金を購入するために蓄えた資産を喪失することが心情的に受け入れ難いと感じます。こうした人は、自分の寿命が短く、長寿に対する保障の恩恵を受けられないかもしれないと心配するのです。
  • セキュリティー。保険会社は、稀ではありますが破綻することがあり、全ての約した給付を履行できなくなることがあります。しかし、このような場合に少なくとも最小限の保障をするという州規定があり、多くの場合、他の保険会社が拠出します。この保障水準は、州により異なります。

長寿年金:長寿年金は、80歳や85歳といった将来のある時点まで支払いが開始されない年金です。長寿年金は、様々な退職後の問題に対処します。一般的に退職者は、その退職資産の一部のみを長寿年金の購入に充てます。その残高を退職後すぐの15年から25年の支出に充てます。全て予定通りなら、退職後の後期に収入の補完ができます。長寿年金の目的は、退職者の生計資産の枯渇に備え、人生後期の収入に確実性を与え、後年の収入や支出に関する賢明な決定をする能力に影響し悪化させるかもしれない精神力低下による悪い流れを減らすことです。

長寿年金からの毎月の収入は、即時開始年金で支払われる毎月の給付金よりもはるかに大きくなります。保険会社は早い段階での支払いの必要がなく、据置期間中の運用収益から給付金を支払うことが可能です。また、長寿年金を購入する誰もが必ずしも給付金を回収するまで長生きするわけではありません。保険会社は、こうした死亡を想定して長寿年金の費用を減らします。

即時開始年金の利点(確実性と保障)と弱点(コスト、インフレリスク、原資の喪失に関する懸念)は、長寿年金にも当てはまります。

長寿年金の利用を促す取り組みとして、退職金制度およびIRAからの分配を70 ½歳までに開始する際の要件緩和を認めるIRS規則が発行されました。この規則の下で、雇用者もしくは被雇用者は、$125,000またはアカウントの25%のいずれか小さい金額を、85歳前には支払開始しない年金契約に移転することを選べるもので、税制適格長寿年金契約(QLAC)として知られています。しかし、制度スポンサーに対するフィデューシャリー責任に関する不確実性、および本オプションを選択する退職者がほとんどいないであろうという認識から、本オプションを退職者に提供しているスポンサーはほとんどいません。その上この年金を他の資産(退職金制度やIRA以外)で購入する場合、退職者によってはもっといい税制優遇措置が受けられる可能性があります。

長く働き、退職を繰延:本戦略を採用している米国人が増えていることを複数の調査結果が示しています。長く働くことで、就労期間中に利用可能な退職資産の流出を軽減または排除します。退職を繰り延べることで、社会保障から支払われる金額が増加します。Medicare資格(通常65歳)を得るまでの健康保険の費用も非常に高額です。そのため、健康保険を受けられる立場で就労し続けることは、特にMedicare資格を得られるまでの間、退職資産の流出を大きく減らします。

就労期間が延びることで、退職資産をさらに積み増せる可能性があり、後年の退職後収入を増やすことになります。

人事を尽くして天命を待つ:本戦略による成功について、よく知られるまじめな学術研究はありません。本アプローチを採用する人で寿命の短い人は、相続人に多額の資産を残す可能性が高いかもしれません。一方、寿命の長い退職者は、退職後の収入を補完するため、追加の雇用を受け入れたり、他の手段を求めたりするかもしれません。消費習慣やライフスタイルのプラス・マイナスの予期せぬ調整は、本人に大きく影響を与えます。

本戦略を用いる人は、強力な支援体制を構築し維持することに価値を見出すかもしれません。一般的に結びつきの強い家族のいる環境は、本アプローチの効果が高くなります。人生の紆余曲折の中では、想定外の支出、生活費用の変動、予期せぬ医療・介護ニーズなどが発生します。また逆に、予期せぬ金銭的・非金銭的な成果が偶然手に入るかもしれません。

税金に関する注意:本稿は、様々なオプションによる税金面の意味やその結果に対処するものではありません。高額納税区分に入る退職者にとっては、状況次第で特定のアプローチの魅力が小さいという意味で、こうした懸念が大きいかもしれません。退職者は、特定の戦略にコミットする前に、適切な資格を有する税理士に相談してください。

まとめ:雇用者は、被雇用者により良いオプションの提供を望んでいるかもしれないものの、フィデューシャリー、財務面、管理面のハードルが非常に高い状態です。新しい低ボラティリティーの設計が、確定給付型プランの復活につながるでしょうか?新しいテクノロジーやその他の効率化が、信頼できる個人的助言として富裕層マーケット以外にも利用できるようになるでしょうか?企業が現在、退職者に追加の代替案を提供するような商品を開発しているのであれば、そうなっても驚きません。市場ニーズは明確です。ますます多くの退職者の寿命が100歳を超えており、新しいより良いソリューションが必要なのです。